絵本の魅力 子どもに良いのはどうして? 絵本の読み聞かせってどんな効果があるの?

みなさんは生まれてから一度くらいは絵本と接する機会があったと思います。
絵本は子育てに良いということを聞きます。
子どもが生まれたときの子育てに、なんとなく絵本はいいよねと言われているから絵本子育てをされた方もいらっしゃると思います。

ではなぜ絵本は子育てに良いのでしょうか?



絵本が子育てに良いこれだけの理由

絵本が良いと言われている理由は、大きく分けると「絵本そのものの魅力」と「絵本読み聞かせの効果」があります。
このふたつを分けてみていきましょう。

絵本そのものの魅力

まず、絵本そのものの魅力です。
絵本には「絵」と「文字」があります。
なかには「文字のない絵本」もあります。「絵のない絵本」というのもあります。

絵本をWikipediaでは次のように書いています。

”絵本(えほん、Picture book)とは、その主たる内容が絵で描かれている書籍の一種。絵画(イラストレーション)を主体とした書籍のうち、物語などテーマを設けて文章を付与し、これを読ませるものである。”

この定義によると、「絵のない絵本」は絵本とは言えない気もしますが、作家さんの想いもあるのでここでは深くは書きません。

基本的には「絵」が中心の「物語」がある本ということになります。

絵本の魅力のひとつには、絵が感性を育ててくれます。
絵本の中の「絵」には、繊細なものや大胆なもの、迫力のあるもの、原色を多用し心に迫るものや、淡い色で気持ちを優しく包むようなものなど、作者さんの個性がひかります。
おおよそ作者さんの作風は決まっているので、好みの作者さんがいたりします。

絵(絵画)を鑑賞していると、「これ好きだなぁ」と思う絵や「なんか好きになれないなぁ」と思う絵があると思います。
また、見ているとぞわぞわするような怖い絵や目の前がパッと明るく広がるような美しい絵、何が描いてあるのかよくわからない抽象的な絵など多種多様な絵があります。

私たちは、そのような絵をみることで、”無意識”のうちにいろんな感情を体験します。
この体験は、私たちが普段生活していてほとんど感じることの無い新鮮な刺激となります。

絵本にも「絵」があります。絵本の絵をみることでも同様に体験をすることができます
「これ好きだなぁ」「心地良い絵だなぁ」と思う絵の作品に出会った場合、心地良さを感じながら感動も覚えたことを思い出しませんか?

つぎに「物語(ストーリー)」です。
絵本のストーリーは、これも多種多様です。
昔話もあれば、SFのような空想の世界のストーリーもあります。
絵本のストーリーは、ハッピーエンドやサクセススト―リーのものが多数を占めます。
よって、絵本を読むことで、サクセス、ハッピーストーリーを体験します。

そして絵と言葉が結びついた作品は、その世界観、イメージを大きく拡げてくれることになります。

絵本読み聞かせの効果

絵本は子どもが一人で読むというよりは、親が子に読み聞かせをするためのツールとして作られていると言ってもよいでしょう。
絵本を使っての子育ての最大の効果は読み聞かせをすることによって得られます。
それは「地頭の良さ」です。
地頭とは生まれつき持っている頭の良さということではなく、成長する過程で養われていく「生きていくための力」と言えます。
それは、共感力やコミュニケーション力、思いやりの気持ちを持った、自己肯定感の高い人と言い換えられます。

絵本を読み聞かせをしている時間は、親と子が同じ時間を過ごす大切な時間となります。
子どもは親に甘え、認めてもらいたいと思います。
絵本を読む時間は、自分がお母さん(お父さん)を独占している幸せな時間となります。
絵本の読み聞かせのあと、子どもをほめてあげると、子どもの自己肯定感を高めます。

子どもの幸せな顔を見ていると親も幸せな気持ちになります。
そうすると、もっと絵本を読んであげよう!という気持ちになり、親も積極的に絵本が読みたくなります。

親子が不機嫌だと子供は近づきたくありませんし、読み聞かせてもらっても楽しくないでしょう。

絵本は、ただ読み聞かせればよいのではありません。
愛情をもって、子どもをちゃんと見て読むことが大切なのです。

読み聞かせをすることで、次の力がつきます。

①親子の絆が強まります。
②子どもの個性がわかり能力・才能を見つけられます。
③問題を解決する能力が養われます。

そして、生きていくための力(=地頭が良さ)が養われます。



絵本が良い理由は脳科学からも解明されている

私たち人間の脳は、6歳までに約90%の脳の神経系統(シナプス)ができあがると言われています。
TA心理学でも、6歳頃までに自分の人生の人生脚本の筋書きを決定するといっています。

よって、6歳までに脳に何をインプットするのか、どんな環境で育てるのかが、とても大切になってきます。

認知神経科学が専門の泰羅雅登さんが書かれた「読み聞かせは心の脳に届く」によれば、読み聞かせは心の脳に影響を与えると言っています。

”読み聞かせで「心の脳」に働きかけることは、こわい、悲しいがしっかりわかる、嬉しい、楽しいがしっかりわかる子どもを作るということなのです。それを読み聞かせが担っています。
(中略)
理性以前の行動がきちんとできるようになると思います。”

脳研究者の池谷裕二さんは「パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学」の中で次のように言っています。

”絵本は潜在的親近性の結晶です。(中略)「絵本はその人の来歴を映し出す鏡」(中略)親に絵本を読んでもらっている子どもは、脳の前頭葉が強く活動していることが知られています。
親子のコミュニケーションが多ければ多いほど、脳は強く活性化します。”

”絵本は、もう一つの大切な脳の性質を引き出します。「プレ知識」と呼ばれるものです。誕生前から存在する記憶のことです。(中略)長く愛されている名作絵本には、こうした脳のデフォルト嗜好の整理にフィットする要素が、必ず含まれています。”

脳神経外科医の林成之先生は「親子で育む天才脳」のなかで、

”乳児期に良質な絵本を、気持ちを込めて何度も読み聞かせることで、天才的な才能を発揮する人に共通する「統一・一貫性の本能」の質を高めることができる”

としています。

以上からわかる通り、脳科学の観点からも、絵本の読み聞かせが良い理由が見えてきます。



著名人が語る絵本の魅力

絵本の魅力や効果について、いろいろな方がおっしゃっています。

「絵本の力」という本のなかで、河合隼雄さん、松井直さん、柳田邦男さんがそれぞれ視点でお話しをしている

河合隼雄さんは、「絵本は0歳から100歳まで楽しめる。どんな絵本にも、そこに込められている内容は極めて広く深い。一度目にすると、いつまでも記憶に残っていたり、ふとしたはずみに思い出されて、気持ちが揺さぶられる。絵本は相当な可能性を内蔵している」と言っています。
特に「絵本の中にある「音」の大切さ」を語っていますが、確かに、絵本を読んでいると直接的にも、間接的にイメージする中で音を聴いているなぁと思いました。
言葉であ藁していただくと、”なるほど”と思いますが、普段絵本を読んでいて「音」を意識することはほとんどありませんが、ふと立ち止まって、もしくは読み終わった後余韻に浸りながら「音」を思い出すのも楽しそうです。

松井直さんは、編集する側の立場でお話しをしています。「絵本には二つの言葉の系があり、ひとつは文字として表記されている文であり、もう一つは絵です。絵も言葉として読み取れます。文字を読めない幼児が絵本を楽しんでいるのは絵を読んでいるからです。絵本の絵は物語る絵です。」
「絵を読む」という言葉はあまり使いませんが、確かに絵を読んでいると感じることがあります。
文字のない絵本がまさにそれに該当し、「絵を読んで」ストーリーを楽しんでいます。
私は、購入する絵本を絵を見て選ぶことがよくあります。
絵から発せられるワクワク感やドキドキ感、不思議さの伝わる感覚など「読んで」います。
これも、絵本ならではの楽しみ方です。

柳田邦男さんは、絵本がかつて読んだときとは違う深い意味や味わいを見出して、絵本のとりこになったことを話されています。
「人生後半になってからこそ、絵本を常に身のまわりに置き、じっくりと読むべきだと思います。絵本から、忘れていた大事なもの、ユーモア、悲しみ、孤独、支えあい、別れ、死、いのちといったものが、あぶり絵のように浮かび上がってきました。」
私が絵本を親しむようになったのは約2年前の50歳を超えてからです。
それまでは、ただそこにある「本」でしかありませんでした。柳田邦男さんがおっしゃる通り、絵本を読むと忘れていた大事なものが思い出されます。

もうおひとり言語学に詳しい齋藤孝教授の著書「1日15分の読み聞かせが 本当に頭のいい子を育てる」の中で次のように言っています。
「これからの変化の時代を強くたくましく生きるためには「本当に頭のいい子」を育てる必要があり、幼児期の7年間をどう過ごすのかがカギとなる。この期間に読み聞かせをすることは、親子に密度の濃いコミュニケーションをもたらし、気持ちのつながりの確認が、子どもの生きる力を育てることになる。絵本を読んでもらった幸せな時間は子どもにとって何ものにも代えがたい大切な財産になる。」
「親子で共有した時間や経験が多いほど、芯の強い、変化に対応できる強い人が育つ。」
「絵本の世界で体験する心の動き、感情の表れ、その自覚といったものが、人間の芯を育てる」

私も絵本の読み聞かせで最も重要なことは「親子の共有する愛情の通い合った時間」だと考えています。
どれだけ愛情のこもった時間を過ごすかが、子供の成長に大きく影響するだろうと感じています。

絵本を使った子育てが良いのは、テクニックの話ではありません。

子どもとの関係を、どれだけ深く密接に過ごせるかが大切なのです。
忙しい現代、2つのことを一緒にしながら、「ながら」作業をすることはたくさんあると思います。
これは致し方のないところです。
でも「読み聞かせ」をしているときは、ほかのことはできません。子どもと向き合う時間となります。

しっかり子どもと向き合って、子どもを受けとめ、子どものコミュニケーションを楽しみましょう。

(参考文献)
『読み聞かせは心の脳に届く』
泰羅雅登
くもん出版

『絵本の力』
河合隼雄/松井直/柳田邦男
岩波書店

『1日7分の絵本で子どもの頭はみるみる良くなる』
浜島代志子
スバル舎

『ギスギスした人間関係をまーるくする心理学 エリック・バーンのTA』
安部朋子 著
西日本出版

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