私は今、一般財団法人 絵本未来創造機構のEQ絵本講師Rシニアインストラクターとして活動をしています。
絵本に出会って、私の人生は大きく変わりました。
私自身は子どもの頃、絵本を読んでもらった記憶はありません。
実家にも絵本はほぼありません。
探せばあるのかと思いましたが、数カ月前、母に子どもの頃絵本を読んでくれたのか聞いてみると、読んでないねぇ、と返ってきました。
そんな私でも子どもの頃に覚えている絵本が一冊あります。
それは「スーホの白い馬」です。
この絵本は、母に読んでもらったということではなく、保育園の頃、病院に入院していた時に、保育園の先生がお見舞いに届けてくれたものでした。
私の記憶の中では絵本の物語よりも表紙の絵、赤い服を着た男の子が白い馬を抱えている姿が、鮮明に記憶に残っています。
この一冊以外、思い出される絵本はありません。
絵本との関係はその程度の私ですが、2年前に「絵本」と出会ってから、絵本の魅力にはまりました。
絵本の魅力
絵本は心が癒される
絵本の多くは、ハッピーストーリー、サクセスストーリーとなっています。
そして、やさしく、あたたかい言葉が使われています。
絵本を読むことで、言葉の刺激が心のドアをノックします。
ときには、いきなりドアを破られることもあります。
ドアをノックされているときは、ちょっとした違和感を感じているときです。
何だろう、なんかモヤモヤしたり、ムズムズしたり、ちょっと気になる感覚が残ります。
何回も読んでいると、ノックが大きくなり、ドアを開けたくなります。
一歩勇気を振り出してドアを開けると、蓋をしていたり、鍵をかけていた自分の感情が見えてきます。
それは嫌な記憶のある感情かもしれません。
でも、自分にとってとても大切な感情です。
絵本を読んであけられたドアの先にある感情を見つけたとき、その感情と向き合える自分がいます。
そして、その感情を受け入れ、また一つ心豊かになります。
絵本によってドアを開けるとき、ここの準備ができています。
なんとなく、うすうすドアの先にあるものを感じつつ、見ないようにしていましたが、ドアを開けるときには、その感情を確かめる勇気を絵本によって得ています。
絵本は、人の心を癒したり、揺さぶり、そして勇気を与えてくれます。
先日、NHKあさイチに出演されていた絵本作家ヨシタケシンスケさんがおっしゃっていました。
「絵本は子どものためだけでなく、年齢を重ねて改めて読むとそこに新たな発見がある」と。
その時紹介されていたのは佐々木マキさんの「やっぱりおおかみ」でした。
この絵本は衝撃を受けた大好きな絵本だそうです。
「やっぱりおおかみ」を子どもの頃に読んだときは、時折オオカミが発する「け」という言葉に「『け』ってなんだろう」と思っていたそうです。
それから何年もたち18歳の頃改めて手に取る機会があり読んでみたとき「『け』ってそういう意味だったんだ」と意味が理解できたそうです。
子どもの頃は絵が好きで何回も読み、おとなになってからは言葉を理解し、新たな発見がある。絵本には、すべての人が楽しめる要素があります。
同じ絵本でも、絵を楽しんだり、言葉に感動したり、その人それぞれの楽しみ方があります。
私は子どもの頃読んでもらっり、自分で読んだ記憶はありません。先日、母に聞いてみたのですが、絵本はほとんど読んでいないと言ってました。共働きだったので、そんな時間もなかったのかもしれません。
そんな私にとって、絵本は「こころを癒す」ものになっています。
絵本を読むと、笑ったり、クスリとしたり、ニヤッとなったり、涙があふれたり、言いようのない感情が心に沸き上がったります。
そのひとつひとつを受け留めることで、私自身の気持ちが整理され、こころが豊かになってきます。
尖っていた部分が丸くなり、身構えて盾や矛を収め、空いていた穴ぼこを埋めてくれました。
絵本で使われる優しい言葉や表現は、自然と心も優しい気持ちで包んでくれます。
やすらぎを求めようとすることなく、絵本を読むだけで心安らかな気持ちになってきます。
絵本は絵がすばらしい!
絵本には「ストーリー」と「絵」があります。
文章だけでも感動したり、考えさせられたりするものもありますが、「絵」だけで感動を呼ぶものもたくさんあります。
長谷川義史さんの「みどりのほし」はページをめくった時に心をゆさぶる感じがあります。
「絵」そのものは、一見すると子供が書いたような印象向けます。
でも、絵本になったその絵は、自分が絵本の主人公になり、その場面を本当に味わっているような感覚になります。
林木林さんの書かれた文章に長谷川義史さんの絵が肉付けをすると、文章の世界観がぐーんと大きく拡がってきます。
読みながら、そして絵を見ながら、頭の中では文字で表現されている以上のイメージが拡がっていきます。
加藤休ミさんの「おさかないちば」は、お魚が活き活きと描かれています。
加藤休ミさんの絵はクレヨンとクレパスで描かれていますが、描かれている魚たちは目の前に本当にお魚がいるような迫力があります。
図鑑がなくてもこの絵本でお魚の説明ができてしまうくらい、きれいに細かく描かれています。クレヨンだからこその迫力を感じます。
「ウェン王子とトラ」といく作品があります。
中国生まれで現在パリに在住しているチェン・ジャンホンさんが描いた絵本です。
描かれている絵は水墨画の手法を使って、微妙な色合いや繊細でとても迫力のある絵になっています。
この絵本で描かれるトラの表情は、野生そのものの迫力を持ったものがあれば、子どもを見守る母親のような慈しみを持った場面もあります。
背景も中国を連想させる迫力のある空間をイメージさせてくれます。
1ページ1ページがまさに芸術作品としての絵画の連続になっている感じです。
絵本は人間力(EQ)を育てる
絵本の読むことや、読み聞かせをしてもらうと次ような利点があると言われています。
・ボキャブラリーが豊かになる。
・語彙力がアップする。
・優しい言葉遣いを学べる。
・いろいろな世界を仮想経験できる。
・様々な国やひと、生活、いろいろな職業、考え方など多様な世界観が味わえる。
・想像力が豊かになる。
・読み聞かせをしてもらっている親子の絆が深まる。
他にもいろいろあると思います。
このように絵本には生きていくために必要な力を育てる効果があります。
特に幼少期に絵本をたくさん読むこと(読み聞かせをすること)で子どもの脳の大きく育てます。
語彙力や読解力など学力で判断する能力も養うことができます。
2015年にKUMONが行った東大生向けの大学生意識調査によると、親にしてもらって感謝していることの№1は「本の読み聞かせ・いっしょに本を読んでくれたこと」で、40人の方が回答しています。
ただ、学力が上がるということだけではないのです。
絵本を読み聞かせることは、親子で共通の時間を持つことができます。
親子で過ごす時間は子どもにとってかけがえのない時間で、安心でやすらぎを得られる時間となります。
また、お母さんに見守られている安心感は、自分に向き合ってくれている、認めてくれているという自己肯定感を高める効果もあります。
自己肯定感が高ければ、自分の決断に自信が持て、失敗しても自分で考え次のステップに進むことができるのです。
絵本をTA心理学で分析してみると…
絵本の素晴しい効果はお分かりいただけたと思います。
絵本は幼少期にたくさんの種類をできるだけいっぱい読んであげることが良いとされています。
6歳頃までの子どもたちは、大人のように物事の良し悪し、良い悪いという視点でジャッジはしません。
子どもたちは自分が注目されているのかどうかで判断します。
この頃の子どもは五感が敏感で見たこと、聞いたこと、触ったもの、感じたことを全て吸収します。
この時期に親から受けた影響は、その人の後の人生のベースをつくると言われています。
それは、直接言葉で言われたものもあれば、非言語で態度や雰囲気で伝えられる物もあります。
また、育った環境も大きく影響します。
生活習慣や食べ物の好み、味付けなども子どもの頃の体験、経験が元になっています。
また、記憶にあるわけではないけれど、なんとなく自分の好きなものや、癖なんかも小さい頃の潜在意識に刷り込まれている物が多くあります。
TA心理学では、その頃身についた自分の行動の原点を「人生脚本(単に、脚本とも言います)」と言います。
脚本とは、人が生まれてから死ぬまでの人生をドラマとして捉え、そのドラマには脚本が存在していると考え方になります。
脚本は、自分で描いた人生のシナリオ、無意識の人生計画である、と言われています。
そして脚本は6歳~7歳くらいまでに要素・要因を集め筋書きを決定すると言われています。
この時期に、親の枠に、親の好みで選んだ絵本だけを与えていると、子どもはその範囲の経験しかできません。
こどもの世界観を拡げるために、現在、過去、未来、空想や現実世界、動植物や乗り物など実際にあるもの、ハッピーストーリーやサクセスストーリー、喜怒哀楽に富んだもの、戦争と平和、自然の営み、あらゆるジャンルを大量に読み聞かせることで、こどもの引き出しはどんどん増えていきます。
引き出しの中身をジャッジするのはその後の成長の過程養われています。
こどもの脳は大人の考える以上にスポンジのように吸収します。
大人の判断を入れることはありません。
もし良し悪しをれるのであれば、自分が伝えるのに抵抗を感じるもの、不快になるものはできるだけ避ければ良いでしょう。
自分のその気持ちは、言葉(言語)では無く非言語で子供に伝わっていきます。
大人でも言葉と裏腹に雰囲気でその人の感情を読み取ることがあると思います。
子どもも同じです。
かえって大人より敏感かもしれません。
言葉で直接伝えなくても、その家特有のルールが伝わっていくのは、子どもが自分で感じ取っているからなのです。
皆さんもご自身の普通が他の人の普通ではないことを経験したことがあるのではないでしょうか。
自分の脚本を生きやすいものにするためには、幼少期(6歳くらいまで)に絵本の読み聞かせをすることで、親の狭い世界にとどまらず、もっと広い世界を体験することにより、その後の人生をより豊かなものにしてくれます。
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