人間関係に疲れたときのサプリメント やりとり分析ってなあに

夏本番。暑さも厳しくなってきました。
コロナの影響でリモートワークが推奨され、職場、家庭の人間関係も新しい関係になってきました。

コロナが流行する前までは、上司と部下の関係、夫婦の関係、親子の関係は、当たり前こと、意識することなく前提としていた社会秩序が、コロナの感染拡大によって急激に破壊され、新しい社会生活が始まることとなりました。

急激な変化に伴い、最初はその生活に慣れようと頑張っていましたが、少し落ち着きを取り戻してくると、あまりの変化に戸惑い、自分だけではコントロールできない事態に直面し、その精神的ストレスから心身ともに疲弊するひとも増えてきました。

特に、これまでは「職場」と「家庭」という2つの環境が「テレワーク」「リモートワーク」によって、同一環境になりました。その結果、2つの異なる環境を行き来することで保たれていた精神バランスが崩れてしまい、ストレスがたまることになりました。

家庭での人間関係は、最も親密な関係と言えます。
その分だけ、お互いを尊重することもできれば、相手を傷つけてしまうこともあります。

例えば、共働きの家庭で考えてみます。
これまでは、朝、ご主人は会社に出かけ、奥さんは家庭の家事全般を行っていたとします。
コロナによってご主人がリモートワークになると、会社に行くことなく常に家にいます。それまでは、朝ご主人を送り出した後は、奥さんの時間で、家事全般を行っていたものが、ご主人が家にいることで、自分時間ではなくご主人がいる制約がかかってしまいます。食事の準備、掃除、洗濯、買い物、ショッピング…自分のスケジュールで行動できていたものが、ご主人のことを考えながら行動しなければならなくなります。当然ご主人は自分の主張をします。黙って家にいるわけではありません。そのやりとりも精神的な負荷を増すことになります。
ご主人からすると、会社での時間は、仕事中心でコントロールされた時間となり、会社の制約を理解したうえでの生活になりますが、家では会社の制約はないので、会社でできていたルールは適用されません。部下にお願いしていた仕事をすぐに声をかけて頼むことはできず、会議もpc画面を通してのものになります。思った以上に精神的負荷は高くなります。

精神的な負荷を増す要因はいくつかあります。
特に、人間関係、生活環境、社会環境を制約されることは、身体的な負荷よりも精神的な負荷が増大し、ストレスフルになってしまいます。
人は「人間」の言葉通り、ひとりで生きていく動物ではなく、人同士の関係をもって社会生活を営んで生きていく動物です。
その関係も、常に同じものでは満足できず、刺激を求めるようになっています。コロナによって家庭に閉じ込められ、社会生活を制限されることは、精神的にもかなりのストレスを発生させているのです。

でも、この環境が続くのであれば、-当面、続くでしょうね…-少しでもストレスをためない生活を送っていきたいものです。

人と人とのやり取り、コミュニケーションは、基本的には会話で成り立っています。
このやりとりによって、人はきちんと支持を伝えたり、癒されたり、ストレスを感じたりすることになります。

では、このやりとりをコントロールするにはどうすればよいでしょう。

●やりとり分析

2人の会話を一つのモデルを使って分析してみましょう。
私が使うのはTA心理学の自我状態構造モデルを使った「やりとり分析」です。

TA心理学とは、アメリカの精神科医であるエリック・バーン博士が開発した人の思考、感情、行動を、日常のよく使う言葉と図を使って説明している心理学です。
その理論のひとつに「自我状態構造モデル」があります。

「自我状態構造モデル」は、人の会話、話しぶりから発見された理論で、人間には3つのパートがあるとしています。

・「親:Parent(P)」・・親のように振る舞う
・「成人:Adult(A)」・・成人のように振る舞う
・「子ども:Child(C)」・・子どものように振る舞う

この3つの状態のことを「自我状態」と言い、P,A,Cでまとめられるので「PACモデル」とも言われます。

それぞれ、

(P):親や親的役割の人をコピーしたように振る舞う自分
(A):今、ここで起きていることに対応する自分
(C):子ども時代と同じような版を打をする自分

という役割を持っているとされています。

この自我状態を意識して人間関係を考えるのが「やりとり分析」になります。

人と話をしていて「なんだか気分悪い!」「なんか話がかみ合わないな」「この上司とはウマが合わない」などうまくいかない経験があると思います。
このような経験を分析し、次に同じような場面に遭遇したら、うまく活用できるようにする方法になります。

やりとり分析は、私と相手の間の1回の会話を分析します。
例えば、
 私:おはよう に対し。 相手:おはよう と応える
この1回の会話を分析します。

普通は
 私:おはよう(ニコニコ) に対し。 相手:おはよう(ニコニコ) と応える。ごく自然なあいさつですね。
では、
 私:おはよう(ニコニコ) に対し。 相手:おはよう(つっけんどんに) と応える。私は嫌な気持ちになります。あれ、機嫌悪いのかな?なんか悪いことしたかな?など不安に駆られます。
もう一つ
 私:おはよう(ニコニコ) に対し。 相手:・・・(無視) と応える。応えてないですね。私は何だこいつ!と、ちょっとムカッとし、イライラするでしょう。

このように、短いあいさつひとつとっても、様々な関係性(快・不快、喜怒哀楽)を見て取ることができます。

このように「やりとり分析」を意識すると、人間関係の行き詰まりに、少しだけ刺激をもたらし、新たな展開を与えてくれる可能性があります。

「やりとり分析」は大きく3つの「やりとり」があります。

①相補交流(並行交流)
②交差交流
③裏面交流

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

●相補交流(並行交流)

相補交流は最もシンプルなやりとりになります。
さきほどの例では、「私:おはよう(ニコニコ)」に対し「相手:おはよう(ニコニコ)」と応える、ごく自然なあいさつのパターンです。
自分が相手の自我に対して発した言葉に、相手がその自我から応えるパターンです。
例の自我状態にあてはめて考えると、A(成人)⇔A(成人) と考えられます。(もしかすると、C(子ども)⇔C(子ども)かもしれません)

このように、自我状態が並行となる組み合わせは9通りあり、やりとりが並行であれば、会話はいつまでも続く可能性があるとされています。

例)A⇔A(成人⇔成人)
上司「今何時だ?」
部下「9時半です」
上司「今日は暑なぁ!」
部下「そうですね。とても暑いです。」
上司「この後の会議の準備はできたか?」
部下「もう少しです。コピーをとれば終わりです。」
・・・
ごく普通に、会社の中で淡々と繰り返される会話ですね。

もう一つ、P⇔Cの場合
例)P⇔C(親⇔子)
親「宿題終わったの?」
子「まだやってな~い」
親「遅くならないようにやりなさい!」
子「うん、わかった。ちゃんとやるね。ねぇ、聞いて聞いて」
親「なあに。どうしたの?」
子「今日学校で面白いことがあったの・・・。」

親子間の日常的な会話ですね。

夫婦(恋人)間ではこんな感じもあります。
例)C⇔P(子⇔親)
夫「あ~今日は疲れた。ちょっと肩をもんでくれないかなぁ」
妻「(ほほ笑みながら)もちろんいいわよ。お疲れ様。毎日大変ね」
夫「本当だよ。暑くなってきたし、いやになっちゃうよ」
妻「でも、あなたの目は活き活きしているわよ。」

疲れた夫が妻に甘えながら、妻も温かく親の自我で対応していますね。
夫婦関係はこうありたいですね。

●交差交流

ふたつ目は交差交流です。
あいさつの例では、「私:おはよう(ニコニコ)」に対し「相手:おはよう(つっけんどん)」と応える。これは、私の成人の自我から相手の成人の自我に投げかけた言葉に対し、相手は親の自我から私の子どもの自我に対して「そんなあいさつするんじゃない!」のごとく返したパターンです。

もう少し事例でみてみましょう。

彼氏「今何時?」(A→A)
彼女「(甘えた顔で)何時だと思う?」(C→P)
彼氏「・・・」

また、こんなこともあるかもしれません。

彼氏「今何時?」(A→A)
彼女「(眉間にしわを寄せながら)時間ばっかり気にして!なんかあるの!」(P→C)
彼氏「・・・」

このように、ただ情報を求める言葉に対して、子どものように甘えたり、怒ったように返されたりすると、会話は止まってしまいます。先ほどの交差交流は会話がいつまでも続きそうな感じでしたが、交差交流が起こると、会話は突然止まり、今話していた内容と違う話題に移ってしまいます。

夫婦(恋人)間ではこんな感じになります。

夫「あ~今日は疲れた。ちょっと肩をもんでくれないかなぁ」(C→P)
妻「(冷静な顔で)私も疲れているの。あなたはいつも自分のことばかり言うわね。」(A→A)
夫「・・・」

疲れた夫が妻に甘えようとしたところ、妻は冷静に現状を伝える。会話はここで途切れてしまいます。
できるだけこのような会話にならないようにしたいですね。

●裏面交流

最後は裏面交流です。
先ほどの2つのやりとりは、会話の言語レベルのやりとりを見ていますが、裏面交流は非言語が存在するやりとりです。

これも事例で考えましょう。

店員「この商品は、最後の一点となります!」(A→A)
店員「早く買わないとなくなっちゃいますよ(心の中の言葉)」(A→C)
顧客「(あと一点)買います!」(C→A)

「早く買わないとなくなっちゃいますよ(心の中の言葉)」は、店員さんのお客様に対する心理的なメッセージです。
お客様がその心理メッセージを読み取って反応すると、「買います」となります。
もし、心理的なメッセージを受け取らなければ「最後の一点。でも私はいらないわ」となるでしょう。お客様の行動に影響は及ぼしません。

もう一つ、職場でよくある事例です。(最近は少ないのかな…)
太郎さん、次郎さんは職場の同僚です。

定時になって、仕事も終わり!
太郎「今日は疲れたー」(A→A)
次郎「ほんと、疲れたね」(A→A)
太郎「こんな日は、ちょっと飲んでいきたいね(心の中の言葉)」(C→C)
次郎「飲んで帰れば、スッキリするかな(心の中の言葉)」(C→C)

言葉に出しているのは、「疲れたね」だけですが、心理的には、「こんな日は飲んで気分をすっきりさせたいね」というメッセージをお互いが発していて、同調していきます。ここで、同じ気持ちを察し、「じゃあ、ちょっと寄っていきますか」となっていきます。

このように会話の中には、言葉だけでなく裏面を、言葉とは裏腹の、もしくは言葉にプラスしたメッセージを載せることがままあります。日本人の場合、特にそれを(裏面の言葉を)察することを求める傾向があります。空気が読めない、というのは裏面のメッセージを読んでね、ほかなりませんから。

裏面のメッセージを受け取った時の対応は難しいですね。

●よりよいやりとりをするために

3つのやりとりをみてきましたが、このやり取りを常に意識する必要はありません。
会話がうまくいかなかったり、会話をしているとき不愉快になったり、イライラして居心地が悪くなったりしたときに、この2つのやりとりを思い出してみてください。

スティーブ・カープマン博士は次のように言っています。

「堂々巡りや凍結してしまった状況から脱却するためには、相手を凍結してしまっている自我状態から移動させるか、自分の自我状態を変えるか、またはその両方をしなければなりません。」

要するに、会話がうまくいかなくなった時には、自分と相手の自我状態を移動させなさい、ということです。
自我状態を移動させることによって、会話に変化をもたらすことができます。

不愉快な会話が延々と続いているとき、相補交流の状態で続いています。その時、例えば自分の自我状態を移動させ会話をすると、交差交流もなり会話はストップ、会話の流れが止まります。そこで話題を変え、不愉快な状態から脱することができます。
会話のテクニックでも、話題を変えるために相手の意図しないことを言う、というようなアドバイスがありますが、これは交差交流のことを言っていますね。
もし、会話を終わらせたい時には、今どんなやりとりが行われているのかを意識してみてください。状況がつかめれば、交差交流が役に立ちます。

また、裏面交流が行われているかを意識することで、自分の回りの人との関係をよりよくする助けになるかもしれません。裏面交流で発せられるメッセージを受け取り過ぎると、自分を見失うことに津賀がる可能性もありません。メッセージの存在を意識し、受け取っても、次の行動は自分の意志で動くことが肝要です。

話しをしたくない人との会話や、繰り返されるうんざりする話を止めたい時には、自分の自我状態を移動させることで、会話が一瞬止まります。その後話題を変えたり、その場を離れるのもよいでしょう。
また、話しをしていると会話の続かない人も人もいます。話しがぶつぶつ切られるような会話ですね。このような場合には、自分の自我状態を移動させないで、辛抱強く会話をするか、逆に自分の自我状態を移動させて、相手の反応を見てみるもの良いかもしれません。
会話は相手と意思疎通を図るために行います。めげずに会話を楽しみましょう。

『はだかのおうじさま』
くすのきしげのり/作
澤野秋文/絵

ウトビアという国に2人の仕立て屋がやってきました。
仕立て屋は、正直で賢い人しか見えない生地を売っています。
仕立て屋はそうやって隣の国や、その隣の国の王様をだましてきました。
ウトビアでも同じように王様をだまそうとしましたが、そのとき王子が、仕立て屋の会話に乗りました。
仕立て屋は、しめしめと思いました。
でも王子はしっかり切り返し仕立て屋を追い出します。

仕立て屋は、P→Cで相手を持ち上げながらだまそうと話しを進めます。
騙されそうなときはCでずっと反応をしているときです。
王子は、最後の最後にCからAに自我状態を移動し、仕立て屋を混乱させます。
仕立て屋は王子の会話に乗るしかなく、だますどころか、自分たちの着ている洋服まで取られてしまいました。

会話の機転を利かせる、ちょっと爽快な気持ちになれる物語ですが、別の視点で見ると会話がどのように変わっていったのか、みることができます。

絵本の最後には王子が仕立て屋に洋服を返し、
「どうだろう、こんどは、だれでも みえる ぬので だれもが すばらしいと いうような ほんとうの ふくを ぼくに つくってくれないかかな」
P→Cへの温かい言葉で締めくくり、仕立て屋も心を入れ替えるようにとなって終わっています。

自分の周りだけでなく、世の中で起きていることを「やりとり分析」でみると、違った風景が見えるかもしれませんよ。

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