人間関係に疲れたときに、名言は何を語っているのか

前回は「自我状態構造モデル」のお話しをしました。

ちょっとおさらいです。

「自我状態」には、3つのパートがあります。

・親のように振る舞う「親:Parent(P)」
・成人のように振る舞う「成人:Adult(A)」
・子どものように振る舞う「子ども:Child(C)」

P、A、Cでまとめられるので「PACモデル」とも言われます。

人は生活している中で、その時その時に自我状態が移行します。

車を運転しているときにも、

冷静に運転している自分・・成人(A)
急に割り込んだ車を批判する自分・・「親(P)」
渋滞で遅刻し、どうしよう、と焦る自分・・「子ども(c)」
落ち着きを取り戻し冷静に考え始める自分・・「成人(A)」

と、自我状態は常に移行します。

自我状態は幼少期に親または親のようにお世話をしてくれた人、周りの大人たちから受けた影響、それは言葉であったり、振る舞い、普段の生活態度、生活習慣などによって形作られていきます。

このように、親や周りのの影響はとても大きいものです。

では、この自我状態を、私たちはどのように使っているのでしょう。

「自我状態構造モデル」では人は3つのパートがあると説明しましたが、人を機能的に捉えると、もっと細分化したパーソナリティ(人格)があると言われています。
それを「自我状態機能モデル」と言います。

3つの状態が精神的にどのような状態であるのか、何があるのかを見せるものであるのに対し、「自我状態機能モデル」は私たちの感情や言動、活動などをとらえて、自我状態の3つの構造をいかに使うのかを自我状態を分割してみせるものになります。

ちょっと固く説明すると
「自我状態構造モデル」は各自が状態の内容に関するものであり、「自我状態機能モデル」は各自が状態のプロセスに関するものです。

構造=「何」=内容
機能=「いかに」=プロセス

「自我状態機能モデル」はいくつかの分類方法がありますが、ここでは代表的な5つの分類方法について説明します。

・養育的親・・「NP:Nurturing Parent」
・批判的親・・「CP:Critical Parent
・成人・・「A:Adult」
・自然な子ども・・「NC:Nature Child」
・従順な子ども・・「AC:Adapted Child」

それぞれを詳しく見ていきましょう。

子どもの頃、親から「・・・しなさい」と命令されることがありました。親の立場からすると、指導者として教えてあげたり、言うことを聞かないから言うことを聞かせようとしたり、悪いことをしたので怒って叱ったり、いろいろな意味があってきつく言います。

このように言われてきたことを、自分も子ども(もしくは周りの人)に対して同じように振る舞っている場合、私は「批判的親(CP)」にいます。
※「批判的親」を「支配的親」と呼ぶひともいます。

一方、親は私の面倒を見て、お世話をしてくれました。抱きしめてくれたり、絵本を読んでくれたり、転んでけがをしたときに手当をしてくれたりしてくれます。
このようなふるまいを自分も同じように行っているとき、私たちは「養育的親(NP)」にいます。

子どもだったころを思い出してみましょう。
私は親の顔色を見て、親が喜ぶことを、喜ばなくても怒られないように振る舞っていました。父親はどちらかというと批判的な人でした。特に母に対しては常に批判的でした。
父が母に対して文句を言っているのを見るのがとても嫌でした。なんであんなことを言うのだろう。あんなことを言われたくない。そう感じていたのでしょう。
怒られないため、うまくやっていくために、きちんと挨拶をし、勉強し、残さず食事をする、反抗的なことなどほとんどなかった子どもでした。
そして、人に対して怒りを出すことがほとんどない子どもでした。
このように両親の期待にそって行動しようとしていた自分は「従順な子ども(AC)」にいます。

また、両親から勉強しなさい!、無駄遣いをするな!、早くとやりなさい!、など言われた時に、「いちいちうるさいな」「いわれなくてもわかってる」など、反抗的な感情を持つことがありました。
これも、親に対しての反応しているので、「従順な子ども(AC)」にいるといえます。

親とは関係なしに、無邪気に振る舞っていたこともたくさんあります。
友達と遊んで走り回ったり、水たまりをバシャンと踏んだり、何も考えずに、ただただ楽しく過ごしているとき。
この時私は「自然な子ども(NC)」にいます。
おとなになった今でも、嬉しいときに笑ったり、手をたたいて喜んだり、感動して涙したり、子ども頃と同じように振る舞っているのはNCにいるときなのです。

そして、「今ここ」を冷静に状況を把握し判断し行動している自分。
このとき私は「成人(A)」にいます。

自分がどの自我状態で発言、行動しているのか、または相手の人は今どの自我状態なのかを知ることは人間関係をスムーズにしてくれます。

職場や日常関係する人、一緒に過ごす人たちにはいろんなパーソナリティがあります。
リーダーシップをとれる人、協調性のある人、NO!とはっきり言える人、楽観的な人、人それぞれです。
このようなパーソナリティは、私たち自身の中にも存在し、それを使い分けています。

よく職場での評価と、コミュニティでの評価が違う人がいます。
普段はおとなしく目立たない人が、何かあった時にはリーダーシップを発揮しみんなを指導したりします。

このように、人は自分の持っているパーソナリティを自由に使い分け、発揮できます。
ただ、上手に使い分けられなかったり、そもそもコントロールすることなく過ごしていると、人間関係はうまくいきません。

人間関係をうまく運ぶために、参考となるものに過去の偉人の名言があります。
これらを紐解くと、自我状態をうまく使っていることがわかります。

〇マザーテレサ
マザーテレサの母性から発せられる、相手を思いやり、尊重し、感謝し貢献する姿勢は、その発言も(NP)からのものになります。

「神様は私たちに成功してほしいなんて思っていません。ただ、挑戦することを望んでいるだけよ」
「あなたは、あなたであればいい。」
「平和は微笑みから始まります。」
「いかにいい仕事をしたかよりもどれだけ心を込めたかです。」

優しく包まれる感じが得られませんか。
このように諭されれば、心穏やかに聞く耳が持てるでしょう。

○スティーブ・ジョブズ

「最も重要な決定とは、何をするかではなく、何をしないかを決めることだ」
「どんなマーケティングでも、駄作をヒットさせることはできない。」

○松下幸之助
 
「一方はこれで十分だと考えるが、もう一方はまだ足りないかもしれないと考える。」
「そうしたいわば紙一枚の差が、大きな成果の違いを生む。」

スティーブ・ジョブズや松下幸之助は言わずと知れた名経営者で実業家です。
彼らの言葉は(A)から発せられるものが多くあります。冷静な判断に基づく示唆に富んでいます。

○相田みつを

詩人としての彼の言葉は、心から出てきた言葉に感じられます。
自然に沸き上がった言葉、(NC)を表現していると言えるでしょう。

「セトモノとセトモノとぶつかりっこすると」
「すぐこわれちゃう」
「どっちかがやわらかければだいじょうぶ」
「やわらかいこころを持ちましょう」

○ウィンストン・チャーチル

イギリスの政治家ですね。
その言葉には、指導者としての決意が感じられます。人を導くリーダーとしての重みがあります。

「決して屈するな。決して、決して、決して!」
「凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない。」
「夢を捨てるとき、この世は存在しなくなる。」

○美輪明宏

「おいしくて体に悪いものを食べて病気になるか、まずくても体に良いものを食べて健康でいるか。食べ物も人間関係も同じ。」

○オードリー・ヘップバーン

「母から一つの人生観を与えられました。他者を優先しないのは、恥ずべきことでした。自制心を保てないのも、恥ずべきことでした。」

美輪明宏、オードリー・ヘップバーンなど芸術に生きた方たちは。ときにントロールされていない(AC)に注意を促します。

いかがでしょう。
このように、名言が心に響くのは人それぞれが持つ自我状態に対して、その言葉のもつ機能が私たちの心に働きかけます。

言葉をそのまま感じて、受取り自分のものにするのもよいでしょう。

ゆとりをもって受け取れる人は、どの自我状態から発しているものなのかを考えてみると良いでしょう。
その考察は、自分が人と関わってコミュニケーションをするときの参考になります。
なぜならば、自分が感じたことがその言葉の持つ意味(機能)になります。
同じように言葉を使えば、自分が伝えたい言葉を相手に響かせる参考に、きっとなります。

名言を自分のものにするために、「自我状態機能モデル」を使ってみてください。

(参考文献)
『ギスギスした人間関係をまーるくする心理学 エリック・バーンのTA』
安部朋子 著
西日本出版

『TA TODAY 最新・交流分析入門』
イアン・スチュアート/ヴァン・ジョインズ 著
深沢道子 監訳
実務教育出版

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