私たちは、一日生活していれば、仕事をしているとき、冗談を言って笑ったり、上司に怒られて気持ちが萎えたり、奥さんに怒られてイライラしたり、無性に腹が立ったり、いろんな感情が出てきます。
常に冷静沈着にいること、なかなかできませんよね。
部下に対しては指導的に振る舞い、取引先とは大人同士、対等の立場で理路整然と論理的に商談を進め、自分の好きなことは目を輝かせ、はしゃぐように振る舞うことがあります。
このようなことから、人がどのような構造(仕組み)になっているのかを考えたTA心理学のモデルに「自我状態構造モデル」があります。
この考え方を知っていると、自分の自我状態を知ることができるので、人間関係のトラブルを減らすことに役立ちます。
人間関係を知るには、まず自分を知る。自我状態とは?
「自我状態構造モデル」とは、どのようなものでしょうか?
「自我状態構造モデル」は、人の会話、話しぶりから発見された考え方(理論)です。
先ほど紹介したように、同じ人でも、相手やシチュエーションが異なると、自分の感情は揺れ動いています。
この揺れ動く状態をまとめたのが「自我状態構造モデル」です。
「自我状態構造モデル」は、
人間には3つのパートがあると言っています。
・親のように振る舞う「親:Parent(P)」
・成人のように振る舞う「成人:Adult(A)」
・子どものように振る舞う「子ども:Child(C)」
この3つのパートのことを「自我状態」と言います。
英語の頭文字を取り、P,A,Cでまとめられるので「PACモデル」とも言われます。
それぞれ、
(P):親や親的役割の人をコピーした思考・感情・行動
(A):今、ここでの直接の反応としての思考・感情・行動
(C):子ども時代の記憶の反復としての思考・感情・行動
という状態になります。
人間関係を複雑にするその人特有の行動パターン
自我状態は、ある出来事に対して常に一貫した行動パターンを示します。
それは、子どもの頃から親や周りの大人から学んだ行動パターンです。
振り返ってみたとき、今、大人になった自分だけど、子どものときと同じように無邪気に振る舞ったり、両親から言われことと同じ行動をしたり、考えたり、何か問題あっても冷静に対応する、ということはありませんか?
このそれぞれの振る舞いが、その人の(その瞬間の)自我状態になります。
子どものときと同じように無邪気に振る舞ったりするとき、自我状態は「子ども(C)」です。
両親から言われことと同じ行動をしたり、考えたりするとき、自我状態は「親(P)」です。
何か問題あっても冷静に対応しているとき、自我状態は「成人(A)」です。
まずは、P,A,Cがあることを覚えてください。
次の例に添って考えてみましょう。
例えば、私が交通量の多い道を運転しているとします。
私は、周りの車のスピードや車間距離、位置に注意を払っています。
当然、信号や道路標識にも注意を払っています。
この時、私は「今・ここ」で起きていることに対して冷静に注意深く対処しているので、「成人(A)」の自我状態にいます。
しばらく運転していると、スピード出して追い越して言った車が、急に割り込んできました。
私は、車がぶつかると思って、ハッとします。
それでも、後続車の車間距離を確認していたので、前後ともにぶつからないようにブレーキングし、事故は免れました。
この時も、私はまだ冷静な「成人(A)」の自我状態にいます。
そのあと私は、乱暴な車が遠ざかるのを見ながら、「ふー、危ないなぁ、事故ったどうするんだ!」と文句をつぶやきます。
このとき私の自我状態は「親(P)」に移りました。
私は、父親が運転する車に乗っていた時、父親が今回と同じように反応して文句を言っていたことを思い出しました。親がしていたことと同じことを無意識に再現したようです。
そして、やっと目的地に着いたけれど、渋滞に巻き込まれたため、約束の時間に大幅に遅れてしまいました。
私は、動揺し、落ち込み、これからどうすればよいのかわからず混乱し、ちょっとパニックを起こしました。
この時、私は「子ども(C)」の自我状態に移行しました。
私は、遅刻した際に教師や親に怒られたことを思い出し(感じ)、怖くなった自分を思い出したのです。これも、子ども時代に体験したことを無意識に、自動的反射的に感じたのです。
それから、時間が経過して、私は今の状況を冷静に考え始めます。
事情を相手にきちんと説明し、遅れたことを素直に謝り、それから約束を果たせば大丈夫。問題ない、と。
このとき私の自我状態は、また「成人(A)」に戻ってきました。
このように、人はその時その時に応じて自我状態が移動します。
それぞれの自我状態での行動、感情、思考の反応を示します。
このように「自我状態」を知っていると、何か起こった時に、自分自身を冷静に見つめる材料になります。
「成人(A)」の自我状態で行動、思考しているときは、「今ここ」を冷静に、感情抜きで判断し、効果的に対応しています。
もし、怒りの感情が続いたり、落ち込んでいる状態が続くようであれば、まず、自分の自我状態を認識し、それから「成人(C)」に移すようにしてください。
割り込まれカッとなって文句を言っている自分に対しては、あ、今私の自我状態は「親(P)」になって、感情的になっている、と気づくことができます。
そして、「成人(C)」に移行すれば、有効な対応をすることをできることがわかります。
同じように、他人の行動も自我状態をもとに考えることができます。
常に、部下に対して怒鳴っている人がいたと仮定してみましょう。
その人の怒っているときの自我状態は「親(P)」です。
もしその人が、常にそのような態度をとっているのとすれば、その人は「親(P)」の自我状態でいることが多いと考えられます。
どうでしょう。
ただやみくもに怒鳴って威圧的なことに恐怖や不安を感じたりしていたときより、その人の自我状態がわかると、訳が分からず不安になるよりも、冷静に、落ち着いて少し気持ちにゆとりが持てませんか。
そして、その気持ちのゆとりから「成人(C)」の自我状態で、相手に対応することができるのです。
人間関係を絵本を使って分析してみると…
いかがでしょう。
自我状態は相手との関係を冷静に判断するためのツールとなりますね。
普段から、周りの人の言動を自我状態を意識して聴いていると、今までとは違った見方ができることを感じられると思います。
ここで、絵本を一冊紹介します。
『ふくびき』という絵本があります。
『ふくびき』
くすのきしげのり/作
狩野富貴子/絵
小学館
幼い女の子とその弟が、クリスマスにお母さんにバッグをプレゼントしようと考えます。
でも、バッグを買うようなお金を持っていません。
そのとき、女の子はふくびきの抽選券を持っていることを思い出します。
急いでふくびきの抽選所に行って引こうとすると、それは補助券で福引を引くことはできませんでした。
この時、抽選所のおっちゃんは、優しい「親(P)」の自我状態で、補助券では日引けないことを女の子に諭します。
その後偶然拾った抽選券で、くじを引くと欲しかった3等賞が当たりました。
でも、女の子は罪悪感にかられ、拾った抽選券だということを話します。
この時、抽選所のおっちゃんは、女の子に同情し、悲しい気持ちになりました。
おっちゃんの自我状態は「子ども(C)」に移行し、助けてあげたいと思います。
そこにいた人たちが補助券をくれて、集まった券でくじを引くと4等賞が当たります。
この時、おっちゃんは、引かれたくじ通りに4等賞の景品を女の子に渡します。
おっちゃんの自我状態は「成人(A)」で、本来の抽選の仕事をきちんと行いました。
このように、絵本の場面、登場人物の気持ちを自我状態で考えてみると、違ったも味わいを感じることができます。
ただ、絵本はここまで分析してしまうと本来の楽しみが半減してしまうので、ほどほどに…
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