人間関係に疲れたときの対処法 TA心理学からみるアプローチ

私たちに日本人は、人の顔色をうかがいながら、空気を読むことをよしとする傾向があります。
全部を言わなくても察して行動することを求められます。阿吽の呼吸もそうですね。

これがうまくできないと、人付き合いもうまくいかないことがあります。
空気を読むといっても、人や環境が変われば、今までうまくいっていたことも、うまくいかないことがあります。
田舎の常識は東京では非常識かもしれません。

人付き合いをスムーズにするために「自我状態」を把握する方法があります。

「自我状態」とは、「今ここ」にいる自分はどんな性格(傾向)を持っているのか、その状態のことです。

TA心理学では、「自我状態」を「親(P)「成人(A)」「子ども(C)」の3つに分類します。さらにこの3つの分類を機能的に「養育的親(NP)」「批判的親(CP)」「成人(A)」「自由な子ども(FC)」「従順な子ども(AC)」に5つに分類します。

人は、思考、感情、行動の組み合わせで生活しています。
様々なトラブルは、感情や思考、行動のバランスが崩れていることから発生します。そのアンバランスな状態を自分で、理解し、統合していく必要があります。
「自我状態」を知ることは、人間関係のトラブル、付き合いにくさ、問題行動を把握するきっかけになります。

「自我状態」を知る、識別する方法は4つあります。
自分自身だけでなく、周囲の観察や情報収集によって行うことができます。

相手の行動から見た識別方法

ひとつめは行動を観察することから判断していく方法です。
行動には、言葉、声色、ジェスチャー、姿勢、顔の表情、呼吸、服装などが含まれます。
それらをいくつか同時に観察することで、自我状態を判断していきます。

例えば、私と太郎さんがカフェで打ち合わせをしていたとします。
最初のうち、太郎さんは、テーブルの上に両手を置き、軽く握っていて、私に正対してしっかり私の話を聴いています。
私の話しに対しても、適度に相槌を入れ、話しやすい状態です。
このとき太郎さんは「成人(A)」の自我状態にいると考えられます。

しばらくすると、太郎さんの視線があちこちきょろきょろし始めました。何か落ち着きがなく、私の話しにも集中していない感じです。どうも、窓の外の人の動き、ざわつきが気になるようです。この時太郎さんの中では子どもの頃に体験した何かに反応した可能性があります。子どもの頃、人のざわつきや騒動をみて、とても楽しく感じたり、興奮したのかもしれません。この時太郎さんは、子どもの頃の楽しかった気持ちを思い出し、その衝動が抑えられず反応している「自由な子ども(FC)」の自我状態にいると考えられます。

更に、打ち合わせが進み、議論が白熱してきたとき、私の意見に同意しかねるのか、太郎さんは腕を組んで、背を椅子にもたれ掛けました。よく、腕を組む姿勢は拒否の姿勢と言われます。きっと納得いかないので、受け入れたくないことは分かります。
その時の太郎さんの表情を見てみましょう。

もし、表情がふてくされているような、憮然としたものであれば、太郎さんは「従順な子ども(AC)」の自我状態にいると思われます。子どもの頃、親に怒られたり小言を言われてふてくされてしまっている状態と同じ気持ちですね。
もし、表情が怒りに満ちているようであれば、太郎さんは「批判的親(CP)」の自我状態にいるでしょう。私の意見に納得できないので、何とか自分の意見を通そうと、その機会をうかがっているのです。きっかけがあれば、太郎さんは私に対して、批判的に意見を言ってくるでしょう。

打ち合わせも終盤になり、お互いの合意点も見つかり、もうそろそろ終わるころ、私が、今日は娘のご飯を作るのですぐに家に帰らなければならない、という話をしたところ、太郎さんは、優しいまなざしで、それは大変ですね、とやさしく声を掛けるとともに、ちょっとしたアドバイスをしていただけました。この時太郎さんは、新米パパの私に自分の経験を重ね、優しく見守る「養育的親(NP)」の自我状態にいて話しをしてくれたと思います。

例えば、腕組みをして拒否の姿勢をとっている相手に対して、「こちらの提案に納得していないように見受けられますが、いかがでしょうか」などと投げかけてあげれば、相手を尊重しつつ意見を伺いたい、という姿勢での質問になるので、まず相手の反応、最初の言葉、声色、表情などから相手の自我状態を読み取ることができます。あくまで、「成人(A)」の時事が状態から、冷静に質問することを心がけましょう。

このように、人の行動によって、その人の自我状態がわかります。
自我状態がわかると、それに応じた対応が可能になります。

「批判的親(CP)」の自我状態にいる太郎さんに対して、私も(CP)で対応すれば、お互いに相手を批判するばかりで、最終的にはケンカ別れになってしまうかもしれません。
「自由な子ども(FC)」の自我状態にいる太郎さんに同調し、自分も(FC)で対応すれば、打ち合わせどころではなく、本題から外れ無意味な時間が流れてしまうことになります。

「批判的親(CP)」の自我状態にいる太郎さんに対して、いったん「従順な子ども(AC)」で受け止め、そのあと、「成人(A)」の自我状態に移って会話を続けることも考えられます。

相手の行動から自我状態を判断すると、相手の精神状態がつかめるので、やみくもに自分の感情に任せて対応するよりも、より良い対応ができるでしょう。

相手の反応から見た識別方法

私が上司で花子さんを部下だと仮定してみましょう。

花子さんが私に対してどの自我状態から反応しているのかを見ることで、自分自身がどの自我状態であるのかを判断する方法です。
自分がある自我状態を示すとき、相手はそれを補完するような行動を示す傾向があります。

例えば、私が花子さんを指導しているとき、花子さんが突然泣き始めました。この時花子さんは(AC)で反応していることから、私は(CP)であったことが想像できます。
このように、自分の行動に対して相手がどのような反応を示すのかによって、自分の自我状態を知ることができます。
花子さんに限らず、私の指導を受けている部下が、泣き出すことがないにしても、委縮して困惑していたり、おびえた表情をしていたり、ふてくされたような表情をしていれば、わたしは(CP)が強気発揮され、相手と良質なコミュニケーションがとることは難しいと考えられます。

私が相談をうける時も同じです。
花子さんが私に相談に来るとき、いつも委縮して私に怒られないか心配そうな感じでいるとき、花子さんにとって私は常に(CP)の自我状態でいると考えられます。
実際そのように対応していると思います。
いつも怒っている、何を言っても怒られる上司には相談しにくいですよね。

自分が指導しているときの自我状態に気がつけば、(CP)ではなく(A)で指導をしよう、と自我状態を変更することができます。
自分の自我状態を変更して、相手と接すれば、相手もそれに気がつきます。
(A)で接すれば(A)で反応します。
お互いが(A)で反応、会話していけば良質なコミュニケーションができるので、有意義な結果をもたらすことができるでしょう。

残り2つの方法は、相手にインタビューしたりする必要があるので、普段の使うことは難しく、カウンセリングなどの場で使われる方法になります。
簡単に説明させていただきます。

育ち、生い立ち、生活環境からの識別方法

その人がどのような子どもだったのか、両親や親代わりだった人たちはどのような人たちだったのか、などを質問することで、その人の自我状態を知ることができます。
子どもの頃の育った環境や、その時の風習、親からの言葉がけ、親の態度、接し方は、その後の人生に大きな影響を及ぼします。
子どもの頃の質問をすることで、今ここの状態を考えるヒントになることがあります。

現象からみた識別方法

例えば、職場で突然泣き出した松子さんがいたとします。そのときの状況から周囲にいた人たちは、なぜ松子さんが泣いているのか、松子さんに何が起こっているのかわかりません。そこで、私が彼女に質問します。その回答で幼少期の話しをしたとします。

松子さんは直接原因となった何かの出来事が引き金になって、幼いころにあった体験を思い起こし(体が反応し)、子どもの自我状態(C)を再体験している可能性があることがわかります。

このように起きた現象、事象に対して、質問をすることで、状態を判断することがでます。

ヨシタケシンスケさんの絵本に『ころべばいいのに』という作品があります。

『ころべばいいのに』
ヨシタケシンスケ/作
ブロンズ新社

この絵本には、いろいろな自我状態がわかりやすく描かれています。
子どもが主人公なので(AC)(FC)の反応が中心になりますが、視点を変えると、(AC)で反応しているのは相手が(CP)だからかな、とか、思いっきり無邪気に遊ぶ姿は(FC)そのものであり、冷静に考えているときは(A)がはたらいているなぁとみることができます。

絵本を読んでいて、自分がうなずけるところ、そうそうとにやりとできるところがあったとすると、そこは、自分の自我状態が昔の自分の「何か」に反応しているかもしれません。そこを掘り下げてみると、面白い気づきを得られるかもしれませんよ。

人間付き合いをスムーズにするために「自我状態」を把握することは、自分(相手)を知る基本的な方法となります。

ぜひ利用してみてください。

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