絵本「スイミー」「フレデリック」の作者。それは、みんなが知っているレオ・レオニ。
・どのような人生を歩んできたのか?
・どのような絵本を残しているのか?
・絵本以外の作品は?
など、
とても興味があります。
現在、板橋区立美術館で「だれも知らないレオ・レオーニ」展が開催されています。
その会場で観て、感じたことを書き留めたいと思います。
レオ・レオニの生涯・経歴
レオ・レオニ(レオ・レオーニとも表記されますが、ここでは「レオ・レオニ」とします)は、1910年5月5日オランダ・アムステルダムのユダヤ系の裕福な家庭に生まれました。
父はダイヤモンド産業の仕事をしていて、のちに公認会計士となったルイス、母はオペラ歌手のエリザベトです。
叔父たちの影響もあって、ピカソやクレーなどの芸術に囲まれて育ちました。
1930年代にイタリアで絵画とデッサンの制作活動を始めますが、ファシスト政権の弾圧を受けてアメリカに亡命。
フィラデルフィアで広告代理店に勤めたのち、ニューヨークに移りグラフィックデザイナー、アートディレクターとして成功をおさめます。
1952年にはエリック・カールの才能を見出し、ニューヨーク・タイムズのグラフィックデザイナーの就職を世話し、編集者を送って絵本の仕事も勧めています。
1959年、孫のために作った初めての絵本『あおくんときいろちゃん』を発表し絵本作家としてデビューしました。
その後、イタリアに戻り、アメリカと行き来しながら、絵画や彫刻、絵本などの制作を続け、およそ40冊の絵本を発表しています。
1970年代には、ある日ふと描いた不思議な木の絵に触発を受け、想像上の植物の構想を積み上げ、1976年に「平行植物」を発表します。
1999年10月イタリアのトスカーナ州で亡くなりました。
広告会社時代
レオ・レオニは24歳の時、ミラノでグラフィックデザイナーとしてのキャリアをスタートさせました。
製菓会社モッタのちょっと漫画チックでデザインが素敵だなぁと目を引くものがいろいろあります。
その頃の作品の中では「楽器を持つ2人の人物」はシンプルな構図だけれでも魅かれる魅力があり、モッタの新聞広告「ミラノからヴェネチアへ直行」「優秀印モッタ」「モッタ・モッタ・モッタ」はちょっとユーモラスだけれど伝えようとした商品が、なんとなく雰囲気だけれども伝わってきます。
その後、ファイズムの台頭によってイタリアを離れアメリカに亡命し、広告会社で働きます。
当初はイタリア的な世界観が理解されなかったようですが、広告代理店エイヤーに入社してからの作品は、絵を観ているだけで興味を惹かれるものも多くあります。
ニコルソンの広告、3コマ漫画は見ているだけでも楽しめます。
雑誌「Fotune」の広告は、楽しくも魅力的なものが多数あります。
「Ad for CCA」はエスニックな感じを醸し出しながらもそのメッセージを訴えかけてくる感じがします。
「あおくんときいろちゃん」が生まれたのもこのころです。
「あおくんときいろちゃん」は、その描いた技法は、グラフィックデザイナーとして彼が紹介していたものでした。
その後の絵本と比べると、イメージに言葉を載せて表現している感じが強いのは、その成り立ちからも伺えます。
彼の広告作品は、芸術的なものや、「これなんだろう」と考えさせられるもの、メッセージ性が強く表されているものなど、数多くの作品を同時に見られるといろいろな刺激を受けられます。
これらを見ているとレオ・レオニの絵本作家とは違うアートディレクターの側面が垣間見れるとともに、彼の絵本製作のベースとなるものも感じられます。
絵本に込められた思い
1959年に「あおくんときいろちゃん」を発表して絵本デビューしてから、だいたい年一冊のペースで絵本を発表し、生涯で37冊の絵本を出版しています。
その中で物語絵本は29冊あり、ねずみが主人公のものが12冊あります。
そのほかには、しゃくとりむしや魚、かえる、ワニなどの動物のほか、文字や石、「かけら」といったものが主人公になったりしています。
残りの8冊は赤ちゃん絵本です。
絵本について、彼は、絵本にひとつの流れを作っていくことを大切に考えていました。
書体にも強くこだわりも持ち、メッセージを伝えるために文章とイラストレーションの「明確な一貫性」が大切だと考えていました。
そして、絵本を通して子どもたちに平和や友情、自分らしくあることの大切さ、自分で考えて行動する重要性など届け続けました。
その思いは、子どもだけでなく大人にも伝わるものになっています。
あおくんときいろちゃん
この作品の視覚的な表現について、レオ・レオニは
スペースにイメージをレイアウトすることにより起こる心理的な意味や、イメージの動きから生まれる視覚的な緊張感など、私が長年にわたって実践してきた視覚的なアイデアを具現化しました。」
と言っています。
この作品と同時期に「Foutune」で用いている手法をまとめた「Design for the printed page」の中で、ちぎって作った形の効果を「意図的にデザインされていないような、自然発生的な感じの形は、手で作ったオブジェのように生き生きしている」と言っています。
これは、まさに「あおくんときいろちゃん」に登場する「色」たちのことを言っているのがわかります。
フレデリック
みんなとはちょっと違っているけれど、社会をリードするのが芸術家としての役割だと信じていたレオ・レオニ。
フレデリックでは、みんなとは違うことばかりをしているフレデリックが、言葉の力だけで仲間たちを冬の寒さや飢えから救うストーリーになっています。
まさに、自分自身のこと、芸術家としての信念に基づいた行動を表しているように感じます。
この作品の最後のページは、英語版(日本語版)とイタリア語版では言葉が変わっています。
イタリア語版を出版するにあたって、レオ・レオニが手を入れたそうです。
そのイタリア語の表現「僕は拍手はいらない ほかの人にもしない それぞれが自分の仕事をしているだけさ」となっており、芸術家としての覚悟が感じられます。
スイミー
スイミーもフレデリック同様、我が道を行くストーリーです。
スイミーは想像力と行動力をもって、仲間の命を救いました。
小さいものが集まって大きく見せる知恵、そしてみんなを率いていく、まさに「目となって」行動することに勇気がもらえます。
困難に当たった時、しっかり考え行動することの大切さが伝わってきます。
実はこのスイミーの原画は行方不明になっているそうです。(残念!)
スイミーの原画として現存しているのは、スロバキアで開催されたプラチスラバ世界絵本原画展で賞をとったきっかけに、スロバキア国立美術館に書き起こし直して寄贈したものです。
行先不明ですが、スイミーの世界観を原画から感じることができます。
幅広い芸術作品
主な作品には、次のものがあります。
ねずみが出てくるお話し
『フレデリック:ちょっとかわったねずみのはなし』
『おんがくねずみジェラルディン:はじめておんがくをきいたねずみのはなし』
『シオドアとものいうきのこ:えらくなりすぎたねずみのはなし』
『アレクサンダとぜんまいねずみ』
『ニコラスどこにいってたの?』
『マシューのゆめ:えかきになったねずみのはなし』
『みどりのしっぽのねずみ:かめんにとりつかれたねずみのはなし』
『どうするティリー?』
『ねずみのつきめくり』
『マックマウスさん』
魚が出てくるお話し
『スイミー:ちいさなかしこいさかなのはなし』
『さかなはさかな:かえるのまねしたさかなのはなし』
ワニが出てくるお話し
『コーネリアス:たってあるいたわにのはなし』
『びっくりたまご:3びきのかえるとへんなにわとりのはなし』
鳥が出てくるお話し
『ひとあしひとあし:なんでもはかれるしゃくとりむしのはなし』
『チコときんいろのつばさ』
『6わのからす』
その他の動物が出てくるお話し
『じぶんだけのいろ:いろいろさがしたカメレオンのはなし』
『うさぎたちのにわ:りんごのすきなうさぎのはなし』
『うさぎをつくろう:ほんものになったうさぎのはなし』
『せかいいちおおきなうち:りこうになったかたつむりのはなし』
『ここにいたい!あっちへいきたい! :にひきののみのはなし』
その他の「もの」が主人公のお話し
『あおくんときいろちゃん』
『はまべにはいしがいっぱい』
だれも知らないレオ・レオーニ展
会 期:2020年10月24日(土曜日)~2021年1月11日(月曜日・祝日)
開催時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 ;月曜日・年末年始(12月28日~1月4日)
(ただし、11月23日、1月11日は祝日のため開館し、11月24日休館)
観覧料 :一般650円、高校・大学生450円、小・中学生200円
*土曜日は小中高校生は無料で観覧できます
*65歳以上・障がい者割引あり(要証明書)
主 催:板橋区立美術館、朝日新聞社
企画協力:Blueandyellow, LLC、コスモマーチャンダイズィング
協 力:好学社、あすなろ書房、至光社
(参考文献)
『誰も知らないレオ・レオーニ』
森泉文美・松岡希代子 著
玄光社
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