コロナは心も弱らせる! ソーシャルディスタンスの影響 人間関係が弱くなると心も弱くなる

コロナ感染が広まった時に、DVや家庭内不和、コロナ離婚などが話題になりました。
なぜそのような状況が起こったのでしょう。

改めて、コロナは目に見えない病気です。手洗い、うがい、マスクをして感染しない対策が必要になります。
もし感染してしまった場合には、高齢者、持病のある人は重症化し、最悪は死に至ります。
コロナ自体がまだはっきりわからない病気であり、治療方法が確立していない今、私たちにできることは感染予防であり、その有効な手段として「ソーシャルディスタンス」が言われています。
ソーシャルディスタンス、社会的距離を保つことですが、この社会的距離を保つために、これまで当たり前に行っていた人との接触する機会が急激に失われました。
このソーシャルディスタンスは準備する猶予もなく、一気に私たちの生活を一変させました。
その影響は、目に見える生活様式の変容だけでなく、「こころ」にも大きな影響を与えることになりました。

人は人とコミュニケーションをとって、交流しつながりを持つことで、精神的な安定を図っています。
それがソーシャルディスタンスをとることは、その機会を奪うことになり、人にとっては非常にストレスなことなのです。

コミュニケーションの機会が失われることは、人間の持つ根本的欲求が満たされなくなり、ストレスがたまることになります。
家族間での会話はあるかもしれませんが、クローズドな中での会話は、環境の変化がなくなり、刺激を求める欲求が満たされなくなります。

人が持つ根本的な欲求として、アブラハム・マズローは「人の欲求は6つの段階に分けることができる。と言っています。

基本的な欲求から順に

「生理的欲求」(physiological needs)
「安全の欲求」(safety needs)
「社会的欲求と愛・所属の欲求」(belongingness needs)
「承認・自己承認の欲求」(esteem needs, self-esteem needs)
「自己実現の欲求」(self-actualization needs)
「自己超越の欲求」(self-transcendence needs)

となっています。

ソーシャルディスタンスにより、基本的な欲求の3段階までが満たされにくい状況になっていると考えられます。

TA心理学では、人間の根本的な欲求を6つに分類しているので、TA心理学をもとにみていきましょう。



人間の根本的欲求

人は、満足できる人間関係の中でいろいろな人と関わり自分の欲求を満たそうとし、追い求めます。
TA心理学では、その欲求を追い求めることを「飢餓」を満たすために生きている、という言い方をしています。

飢餓というと難しい感じがしますが、TA心理学の創始者エリック・バーンは次のように言っています。

6つの飢餓を満足させるために、素敵な人と出会い、おしゃべりし、おいいしい食事をし、セックスをして妊娠すれば、やがて子どもが誕生し家族ができる。そして、その子どもが次々と出来事を提供してくれるであろう。

もう少しわかりやすく言うと、人は生まれて、恋人と出会い、恋愛し、結婚し子どもが生まれ家族ができる。その生活が欲求を満たすサイクルになっているのです。

「6つの飢餓」は後ほど詳しくお話しします。



人は刺激なしには生きられない

心身ともに健康と言いますが、人間の体が食べ物や水、ビタミンなどの栄養を必要とし、それがないと病気になってしまいます。
それと同じように人間の神経系(精神)も刺激に飢えていて、それを取り上げられてしまうと精神的にバラバラになってしまいます。

1930年代、ロシアモスクワでのトロツキスト裁判で明らかになった事実があります。
被告人たちは、拷問により罪を告白させられたのではなく、独房(煌々と明かりがついているか、真っ暗闇の部屋)に一定期間閉じ込めておくことを続けることで告白したのです。
つまり「単調であること」が最大の要因となっていたのです。
人との接触が皆無で、朝か夜かの区別もわからない、食事も同じものだ出されるような、環境に何の変化もないような状況下では、精神系は崩壊し、心も壊れてしまうのです。
この変化を求めること、何かを感じたいという感覚に対する欲求は、他人を犠牲にしてでも手に入れたい強烈なものになっていくとされています。

同じことが赤ちゃんでも起こるとされています。
身動きがとりにくいベビーベッドに寝かされたまま、食事を与える以外は何時間も、何日も放置された赤ちゃんは、徐々に身体的、精神的に崩壊していきました
これは脳の機能に、健康を保つためには常に刺激が必要とされるからで、刺激がないと退化していくと言われています。

過去には「感覚遮断実験」が行われました。
目隠しをして、手には手袋をはめ音のない一室に閉じ込めました。視覚と聴覚、触覚を奪った状態で閉じ込めたことになります。
この状態で48時間以上耐えられた人はほとんどおらず、幻覚や錯覚を体験することになったそうです。

このことから、人が生きていくためには、視覚と聴覚からの刺激や触れる触れられるというような触覚も欲しており、これらの刺激が心身の健康に大きな影響を及ぼすことが確認されてきたのです。



6つの飢餓とは?

TA心理学では、欲求を満たしたいと思う状況を「飢餓」と呼び6つ考えています。

①刺激飢餓 ・・・5感で感じるもの(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)
②認知飢餓 ・・・周りの人に自分の存在を見てめてもらう
③接触飢餓 ・・・触れられることで得られる安心感、苦痛でも欲しいときがある
④性的飢餓 ・・・性的欲求を満たす
⑤構造飢餓 ・・・グループや組織の組み立て、時間の組み立て
⑥出来事飢餓・・・ハプニング、普段の生活とは違う出来事

それぞれ、次のようなものになります。

①刺激飢餓
人の5感で感じるもの(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)が得られない状況
見たり聞いたり触れたりといった、感覚を通して感じる頃ができない状況

②認知飢餓
周りの人に自分の存在を見てめてもらえない状況。孤独、無視される

③接触飢餓
身体的な接触で感じられる心地よさが得られない状況
触れられることで得られる安心感、苦痛でも欲しいときがあります。
人は他人との肌と肌のふれあいを通した接触を好み、心地よいと感じます。
信頼関係が成り立っているもの同士であれば、肌の触れ合いを通してぬくもりや温かさ、安心感を得られます。
飢餓状態が脱するために、時に苦痛であっても受け入れることもあります。

④性的飢餓
性的欲求を満たしたい状況。
自分にふさわしいパートナーを選んだ場合、セックスは①~④の飢餓状況を癒すための最も有効な手段と考えられています。

⑤構造飢餓
時間をどのように使い過ごすのかを思い悩む状況
時間の使い方を考え思い悩むことは、人生の大きな問題の一つとなる。
人は社会生活を送るうえで、一日の時間をどのように使えばよいかということに意識しよりよい時間の使い方を模索します。
また、2人以上が集まった時に、バラバラに勝手に動くことよりも、組織化して秩序を持った構造にしたいと考えます。

⑥出来事飢餓
単純な変化のない生活に満足できず、日常とは異なった刺激を求める状況
ハプニングや普段の生活とは違う出来事を期待する。
変化のない生活は退屈な状況を生み、新しい刺激を求めます。

これらの飢餓状態を解消するために、人は恋愛し、セックスをして子どもをさずかり、赤ちゃんとの生活は新たな刺激を生みだします。



欲求が満たせないときに人は病気になる

社会生活を営むことは人間の本能とも言えます。
人はひとりでは生きていけない動物で、身体的にも精神的にも他者が必要です。
他者と関わることは心身ともに健康に保つためにとても大切なことです。

コロナ禍の状況で、私たちは強制的に「孤独」な世界へ誘導されました。
その意味では、コロナは「孤独」を蔓延させる感染症であるとも言えます。
これからワクチンが開発され、コロナの研究が進めば「孤独」な状況も改善されると思います。
これまでのような関係が元に戻ることはないかもしれませんが、ソーシャルディスタンスを保った新しい関係性が作られるでしょう。

「誰かと喋ろう」
この言葉を、私は5月以降伝えてきました。
誰かと喋ることは、精神的な健康を取り戻す第一歩になります。
かしこまった話をするということではなく、世間話でよいのです。
誰かが話すのを聴いてあげる人がいれば、それだけでやすらぎが持てます。
話すことは、心のモヤモヤやイライラ、たまった感情を吐き出せます。
どんな人でも話すことで気持ちが楽になります。

ソーシャルディスタンスが求められる今、オンラインを通じた会話も多くなっています。
その中で、ひとつでも安心して話す場があれば、できるだけその機会を活かすようにしてください。

話すことで、心の病気の予防になるでしょう。



(参考文献)

『ギスギスした人間関係をまーるくする心理学 エリック・バーンのTA』
安部朋子 著
西日本出版

『TA TODAY 最新・交流分析入門』
イアン・スチュアート/ヴァン・ジョインズ 著
深沢道子 監訳
実務教育出版

『交流分析による愛と性』
エリック・バーン 著
石川弘義・深沢道子 訳
番町書房

 

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